効果的な調査依頼の出し方

2020.01.01 | 調査コラム

本記事は、執筆時に調査した内容を元に掲載しております。最新情報とは一部異なる可能性もございますので、ご注意ください。

1.はじめに

 アズテックでは特許に関わる調査サービスを提供しており、日々様々な問い合わせや依頼が舞い込んできます。勿論、どのような依頼であっても一定の報告ができるよう対応していますが、一方で依頼の方法によって調査品質に影響が出る事もまた事実です。
 そこで今回は、より効果的な調査依頼ができるためのポイントについて触れてみたいと思います。これらが無くとも調査ができなくなるということはありませんが、「+α」を求めたい時に思い出してみてください。

2.調査資料を早めに用意する

 調査内容について整理された情報(調査資料)の共有は早ければ早いほど良いでしょう。資料を準備するにも色々と都合があるとは思いますが、ヒアリングの当日、その場で初めて調査会社の担当者が目にするよりは、担当者がヒアリングの前に一読し考察や下調べができる程度の猶予が欲しいところです。

 これにより調査会社側にとってはヒアリングの際により深い議論ができ、ヒアリングの質を高められるというメリットがあります。一方で依頼側にとっても、その資料を作成する過程で情報が整理されるため、早めに情報の不備(検討事項、確認事項)が見つかれば、ヒアリングの前に議論を一歩進めることができるというメリットがあります。

3.コンセプトを明確化する

 いざヒアリングが始まると、たまに「あれもしたい、これもしたい」と一つの調査にいくつもの効果を期待してしまうケースを見かけます。アイデアを出していく事も臨機応変に方針を修正していく事も建設的なプロセスの1つではありますが、それだけでは調査の収拾が付かなくなり非効率な調査にも繋がってしまうため、一度冷静になって情報を整理し本来の目的を改めて確認する事も必要です。(広げた風呂敷は畳みましょう。軸がブレないよう結び目はしっかりと)。

 実際、一つの調査依頼に対して依頼側の複数の部門が関与したケースでは部門毎に要求が異なるといった事もありました。こうした場合でも仕様を継ぎ足したり折衷案を採ったりといった対応は可能ですが、調査段階で混乱したり、調査結果が本来の狙いからズレたりといった事を招きやすいため、慎重に進める(できれば要求仕様をシンプルにする)必要があります。

4.調査会社が依頼元と直接コンタクトできる

 (当社の取引先に限った話ではありますが、)調査の依頼側の構成は大きく2パターンあり、1つは知財系の担当者が調査テーマを設定し直接の依頼元となるケースで、もう1つは技術部門など知財以外の担当者が依頼元となり知財系の担当者は依頼のサポート役や調査会社との窓口を担うケースです。

 特に後者のケースにおいては、様々な事情から調査会社側と依頼元との直接のやりとりが出来ない場合があります。直接ヒアリングができないと細かなニュアンスが伝わりづらいという問題もありますが、あえて間に人を入れる事に依頼側のメリットもあります。そのため善し悪しを簡単に論ずる事はできませんが、調査担当者からすれば依頼元と直接コンタクトがとれるに越したことはありません。ダイレクトに意思疎通ができれば情報の齟齬を抑えることができ本質的な議論もしやすく、理想的なアウトプットにより近づけるという大きなメリットがあるからです。

5.継続的な取引と同系統の技術領域

 どのような仕事でも長期の取引関係は貴重でありがたいものですが、サーチャーにとってはそれ以上の意味を持ちます。サーチャーはそれぞれ専門あるいは得意な領域を持っていますが、依頼として受ける調査テーマの技術領域に合致するとは限りません。しかし依頼元へのヒアリングや関連情報の収集、公報査読といった一連のプロセスを通じてサーチャーは依頼される領域の知見を深めていきます。依頼があればあるほどその機会も増えますが、同じ(または類似した)領域を一定期間の内に集中して担当していくとその効果も高まります。

 私がお話を伺う限りでは「利用している調査会社が1社だけ」というところは少数派で委託先が複数社あることが一般的な様です。そうであれば、委託する調査会社毎に基本の担当領域を決めて振り分けることも出来ますし、あるいはその担当領域を一定期間でローテーションさせたりと、工夫の余地がありそうです。実際に、調査会社へ依頼するテーマを意図的に仕分けて割り振っているケースもありますが、その仕分け方に各社の色が出ています。

6.相見積もりを避ける

 皆さんはレストランに行き、ひとまず料理を出させて味見をし、気に入った料理にだけお金を払いますか?おそらく叩き出されるか、警察を呼ばれてしまうかのどちらかになるでしょう。これは「サービス」の特性で、「サービス」の価値はその場で発生し、同時に消費されていくためです。これが「モノ」であれば別で、金具10万個が欲しいからと言ってサンプルと見積もりを要求し相見積もりをするとしても咎められることは無いでしょう。

 特許調査もサービスの一種です。このため結論から言えば一部を除き相見積もりをしない方が、委託側/受託側双方にとってトータルで考えるとプラスになります。正確に言えば、特許調査サービスにおいては相見積もりをする事で双方にデメリットが生じます。

 なぜなら、調査提案は案件毎・顧客毎の状況に応じてオーダーメイドで行われるためです。少なくともアズテックでは、特許調査は双方の協力があって初めて良い調査ができると考えています。しかし相見積もりでは最初からコストをかけ過ぎるわけにもいきませんので、ヒアリングなどが不十分になりがちです。このように必要な検討が尽くせないとすれば、相見積もりの調査提案は目を閉じてボールを投げるのと等しく、相手の意に沿うか否かは博打になります。その他、優先順位も下がりやすいですし、サーチャーも人間ですので失注リスクのある案件に対して本来の力が発揮できない可能性もあります。

 これが逆に「相見積もりではない案件」であれば、提案のためのコストを十分に掛けられ、博打提案にならず、優先順位も下がらず、担当サーチャーも余計な心配をせずに100%の力を発揮できます。

 また費用についても問題があります。業界によりますが、相見積もりが常識の業界であればその相見積もりで採用されなかった時のコストは採用された案件に上乗せされることになります。つまり、個々の企業がコストダウンを目指して活動するが故に、業界全体でコストアップを図っていることになります(または、受託側の利益を削り受託側の業界が疲弊するか)。典型的な囚人のジレンマです。

 相見積もりをしないと適正価格が分からないという声もあるでしょう。その点については、複数の調査会社と取引をしていれば別案件だとしても適正価格が見えてきます。もし調査費用が適正価格から外れていると感じるようであれば、是非相談しましょう。

 勿論、相見積もりをする理由も事情もよく分かりますので、当社では相見積もりでも受け付けています。ただ、もし「より良い調査を目指す」という点に共感していただけるようでしたら今一度相見積もりの意味を見つめ直してみてはいかがでしょうか。

営業部 小倉

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