アズテック調査コラム
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パテントファミリーの基礎と調査への利用

1.はじめに

 ある特許出願を基礎として優先権を主張し、各国(自国も含む)へ出願された、特許文献のグループのことを「パテントファミリー(特許ファミリー)」といいます。
 本稿では、パテントファミリーに関する基本的な知識と、特許調査においてパテントファミリー情報をどのように利用できるかについて、ご紹介します。

目次

1.はじめに
2.パテントファミリーの基礎知識
 2.1 EPOでの定義
 2.2 データベースによる差異
3.特許調査におけるパテントファミリー情報の利用
 3.1 技術内容の効率的な把握
 3.2 ドシエ情報の利用
 3.3 マクロ分析への利用
4.おわりに

2.パテントファミリーの基礎知識

2.1 EPOでの定義

 EPO(欧州特許庁)では、以下の2種類のパテントファミリーについて定義しています。

「DOCDB simple patent family(以下、シンプルファミリー)」
 優先権主張番号(優先権主張の基礎とした出願の出願番号)が全く同一である特許文献のグループです。同じシンプルファミリーに属する文献は、同一の技術内容をカバーしていると見なされます。

※Patent Information News 1/2014 より抜粋・赤枠を追記

 上図の例では、Document D1~D5の文献は、赤枠で囲った4つのシンプルファミリーに分かれます。
 Document D2とD3は、全く同一の優先権主張番号(Priority P1とP2)を有しているため、同じシンプルファミリー(Family P1-P2)に属しますが、Document D1、D4、D5は、全く同一の優先権主張番号を有する文献が他にないため、それぞれ別個のシンプルファミリーになります。

「INPADOC extended patent family(以下、拡張ファミリー)」
 ある優先権主張番号から直接的または間接的にリンクしている特許文献をまとめたグループです。同じ拡張ファミリーに属する文献は、技術内容は類似しているが必ずしも同一ではない、とされています。

※Patent Information News 1/2014 より抜粋・赤枠を追記

 上図の例では、Document D1は、D2およびD3と共通する優先権主張番号(Priority P1)を有しており、D2およびD3は、D4と共通する優先権主張番号(Priority P2)を有しており、さらにD4は、D5と共通する優先権主張番号(Priority P3)を有しています。Document D1~D5の文献は、Priority P1からPriority P2およびPriority P3を介して直接的または間接的にリンクしているため、赤枠で囲った1つの拡張ファミリーに属することになります。

 EPOが提供する無料の特許検索データベースである「Espacenet(2019年11月リニューアル版)」では、調べたい特許の番号を検索し、検索結果の「Patent family」タブを選択すると、下図のように「Simple family」タブでシンプルファミリー、「INPADOC family」タブで拡張ファミリーに属する文献の情報を、それぞれ確認することができます。

2.2 データベースによる差異

 各種特許データベースに収録されているパテントファミリー情報は、上記EPOで定義しているシンプルファミリーを採用しているもの、拡張ファミリーを採用しているもの、あるいはデータベース独自の基準を設けているものなどがあり、データベースによって異なります。使用されているデータベースがどのような基準でパテントファミリー情報を収録しているのか、確認されることをお勧めします。

3.特許調査におけるパテントファミリー情報の利用

3.1 技術内容の効率的な把握

 例えば中国語で記載された特許文献の内容を知りたい場合、同じパテントファミリーに属している日本語や英語で記載された特許文献を参照することで、技術内容を理解する手助けになります。

 また、無効資料調査や技術動向調査などで、全世界の特許文献を調査対象にしたい場合、どうしても母集団件数が膨大になってしまいます。そのような場合に、パテントファミリー毎に代表公報を1件選んで読むことで、同一または類似する技術内容をまとめて把握することができ、母集団件数を減らした効率的な調査ができます。

 一方で、同一の技術内容をカバーしていると見なされているシンプルファミリーであっても、特許請求の範囲の記載は各出願によって異なる場合があるため、特に侵害予防調査(クリアランス調査)において、具体的な製品や特定国での販売等が確定している場合は、最終的には出願毎に侵害の可否を確認することをお勧めします。

3.2 ドシエ情報の利用

 例えば、ある特許を無効にするための資料を探したい場合、同じパテントファミリーに属する他国の特許出願の審査状況や引用文献は、有用な情報となり得ます。

 他国の審査で引用された文献およびその拒絶理由を確認することで、その文献自体が無効化するための資料として使える可能性がありますし、また他国の出願やその引用文献に付与されている特許分類などを調査に利用することもできます。

 特許出願の手続や審査に関連する情報を「ドシエ情報」といいますが、五大特許庁(日米欧中韓)では、パテントファミリーのドシエ情報をまとめて閲覧できるサービスをそれぞれ提供しています。

 日本特許庁が提供する特許情報プラットフォーム「J-PlatPat」では、「ワン・ポータル・ドシエ(OPD)照会」で上記の情報が閲覧できます。

 まず「特許・実用新案番号照会/OPD」で、下図のように検索対象の「OPD照会」を選択し、調べたい特許の番号検索を行います。(番号検索の詳細な方法については、調査コラム「簡単にできる特許検索」をご参照下さい。)

 検索した特許のパテントファミリー(拡張ファミリー)に属する文献のリストが表示されます。

 全ての文献について、審査書類を確認したい場合は「書類情報を全て開く」を、引用文献を確認したい場合は「全ての分類・引用情報を表示」を、それぞれ選択します。

 個別の文献について、審査書類を確認したい場合は「書類一覧 開く」を、引用文献を確認したい場合は「分類・引用情報」を、それぞれ選択します。

3.3 マクロ分析への利用

 以前のコラム(*)に、特許情報を組み合わせることで様々な分析ができるとありましたが、パテントファミリーのデータも組み合わせることで分析の幅が広がります。

 例えば「パテントファミリー毎の出願件数」は「特許の重要度」を測る一つの指標と捉える事ができます。ある特許出願について、同じパテントファミリーに属する外国出願の数が多いということは、その出願人が多国に渡った事業展開を考えているなど、その特許出願に関する技術に力を入れていると推測できるためです。他にも「パテントファミリー毎の出願国」を利用して重要な技術や特定の課題を国別にプロットすることで、他社のグローバル戦略が見えてくるかもしれません。

(*)参照:「特許情報の基本知識 > 4.情報を組み合わせる

4.おわりに

 パテントファミリーの基本的な知識と特許調査における様々な利用場面について紹介しました。パテントファミリーは、各国の特許文献を紐付けて見ることができるとても便利な情報であると言えます。その性質を正しく理解した上で、上手に活用して効率的な調査に役立てていただければ幸いです。

調査事業部 藤田

【参考】
・Patent families at the EPO
http://documents.epo.org/projects/babylon/eponet.nsf/0/C9387E5053AA707BC125816A00508E8D/$File/Patent_Families_at_the_EPO_en.pdf
・Patent Information News 1/2014
http://documents.epo.org/projects/babylon/eponet.nsf/0/CE0CCA52C8BAEFCDC1257C99004C1BA2/$File/patent_information_news_0114_en.pdf
・Espacenet
https://worldwide.espacenet.com/patent/
・特許情報プラットフォームJ-PlatPat
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/